2012年2月29日水曜日

CATとは猫ではなくて、自然災害のこと


さてさて、我が家には猫が二匹もいるのでCATといえば猫だと普通の人は想像するだろう。でも損保の世界では、実は自然災害(Catastrophe)のことを意味しており、具体的には地震や風水害のことを指す。いうまでもなく、昨年の3.11はまさに想定外のCAT Eventが発生した。損保会社とそのリスクを受ける再保険会社は、このCAT Riskをいかに管理していくかが、経営上の重要な問題となる。生保リスクと異なり、大数の法則が効かない世界だから、扱い方は大分次元が異なる。ロス・カーブといわれる、予想損失額の分布をモンテカルロ法などの確率論的手法で描き出し、それを200年に一回の再現期間などのパセンタイルを種々の水準できめて、必要資本の算定や純保険料の算出などに使っていく。ここで、また生保と異なるのは、ファイナンスの数理とは全く別のサイエンスが必要になることだ。損保会社が付保している住宅物件などの全国、あるいは海外のエクスポージヤーがどの程度地震で破壊されるかを知るには、地震学、地球物理学、建築学、画像処理技術等々の理学的、工学的理論と過去のCAT事象の数百年のデータに基づく確率論的モデルが必要になる。世界で最も汎用的に使用されているCAT Modelは、いずれもアメリカで開発され、3社の代表的モデルが有名である。欧州のソルベンシーIIや、米国NAIC、英国ABI、カナダのOSFI、格付け機関などが、必要資本の中でのCAT Risk量の算定に、CAT Modelの重要性を認識しているが、これら外部調達ベンダーモデルや自社内部モデルが、会社のリスクを適正に算出しているかの検証手法とそのプロセスの内部統制機能が重要となってくる。各国ともCAT Modelの承認プロセスを法令の中に組み込んでいくものと予想される。複合サイエンス、Multidisciplinaryの体制が一層重要になり、国家の教育・研究機関もそのような時代に乗り遅れないようにして欲しい。CATにその一例を見た。

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