2018年12月20日木曜日

モデル化までの過程(3)



2018年12月20日
 
本記事は、American Academy of Actuariesの雑誌Contingenciesに記載されている記事「Model Behavior—How a modern modeler can add value and drive effective business decisions」の翻訳である。この記事は4回に分けての配信予定であり、その第3回である今回は、「Design Efficient, Robust, and Ambitious Solutions」の1節について配信する。

一般的に二つの最適ソリューションが同じ結果を導き出すならば、難しい最適ソリューションよりも単純なものの方が優れている

効率的で強固で野心的な最適ソリューションを設計せよ

 効率的な「ソリューション」が最も望ましい「ソリューション」である。モデル化における「ソリューション」を設計する際、(問題を明確にしていないという過ちを除けば)モデラーが犯してしまいがちな最大の過ちは、不必要に複雑にしてしまうことである。一般的に二つの「ソリューション」が同じ結果を導き出すならば、難しい「ソリューション」よりも単純なものの方が優れている。

より複雑な「ソリューション」からより価値のあるものが得られる場合、「付加された価値が付加された複雑さを上回るならば」その「ソリューション」が採用されるべきである。「ソリューション」の複雑さを判断する時には、どのくらい冗長かを調べるのがよい。不必要に複雑な「ソリューション」はしばしば冗長性を取り除く(より慎重に最適ソリューションを設計し直すか、すでに存在する他の最適ソリューションを利用する)ことでシンプルにすることができる。

強固な設計とは
1.適応的であること-モデルのデザインや構造が様々な理由から頻繁に変化するという予想をもとに設計されていること

2.透明性が高いこと-将来的にモデルを使用する人がモデルの論理を追うことが十分可能で「ソリューション」を再構築できること

3.検証可能であること-モデルの綿密な調査を行うことができること
のことである。

 理想的な「ソリューション」を実現させることは当然難しいことであるが、妥協をする際には「ソリューション」の質を落とさないようにすることが重要である。そしてモデルの目的に応じて、ある特徴は他の特徴よりもより重要視されることがある。

 野心的な「ソリューション」とは、巧妙で独特で少し狂っているように見えさえするかもしれない。それらは既存の枠にとらわれずに一歩踏み込み、純粋な必要性から開発される。モデラーが対処しあぐねている時に、その野心的な「ソリューション」は最も手に負えなさそうな問題点に取り組むことが多い。野心的な「ソリューション」を創り出すのは一般的に困難であるが、優れた「ソリューション」を創り出すことが目的の場合はモデラーが頼ることができるいくつかの重要な技術が存在する。

その技術とは、極めて徹底的な問題点の理解と幾たびにも及ぶ苦労に取り組むための根気、そして、モデルを改良する前に長い間熟考するための忍耐などである。

野心的な「ソリューション」は稀であり一般的なものではないように思えるが、モデルを十分良いものから例外的に良いものに変えるということで得られる。


次回は、「Model Behavior—How a modern modeler can add value and drive effective business decisions」の第4回を配信予定である。

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